YORIDOKO TAISHO MAKIN'「アトリエ+住居+店舗一体」のモノづくりびとに向けた新たな拠点
ヨリドコ大正メイキン なぜかわからないけど心地いい 大正シェアアトリエ 空き家活用 行政バックアップ案件
2020.9.4

大阪の大正区にある「アトリエ+住居+店舗一体」のモノづくりびとに向けた拠点「ヨリドコ大正メイキン」どんな施設なのか!!?

聞き手/文
ヒトト製作所 野坂大
連載アトリエ+住居+店舗一体 ヨリドコ大正メイキン
登場人物

小川
小川合名会社社長。ヨリドコ大正メイキンのオーナー。

細川
当時は小川ビルに入居していたフリーランスのデザイナー。企画全般、広報などを担当。

神吉奈桜
ヨリドコ大正メイキンができるきっかけとなった人物。イラストレーター兼、広報担当。

川幡さん
一般社団法人大正・港エリア空き家活用協議会(WeCompass)。建物の基本的な設計・施工などハード面担当。
ヨリドコ大正メイキンとは?
「アトリエ+住居+店舗一体」のモノづくりびとに向けた新たな拠点。2017年11月にオープンしました。 大阪市大正区泉尾の築65年の二棟の長屋「小川文化」の北棟を耐震改修+全面リノベーション。大阪の大正から世界に発信するモノづくり新拠点です。

リニューアル前の築65年の二棟の長屋「小川文化」の北棟
現在は大正区のショールーム的な存在に
ヨリドコ大正メイキンは「アトリエ+住居+店舗一体」として古い建物を再生するというプロジェクトとしてスタートしましたが、そこにはもう一つの目標がありました。
というのも、僕らの会社のプロジェクトであると同時に、大正区が応援してくれているプロジェクトでもあったんです。
なので、一民間企業の金儲けとしてではなく、大正区の代表的なプロジェクトとしてオープンした後、空き家、古い建物の再生としてのショールーム的な感じで使ってもらえるようにしたいと思っていました。
そのために、最初のプロモーションの段階から全てのイベント、情報、進捗を、完全に情報公開して進めてきました。
具体的には、
- 耐震改修工事の見学会
- 内装のDIYワークショップ
- 工事過程の漫画付きSNS
- 大正区折々の広報
- クラウドファンディング
- クラウドファンディング 成功報告トークショーの開催
- 改修工事完了内覧会
終始オープンな発信を続けた結果、見守ってくれる人々が増えて、内覧会では、2日間で5~600人の方々が見にきてくれる大成功を納めました。
オープンしてからも、いろんな大学とか行政とか、数百人の見学者を受け入れていて、海外から視察しにいらっしゃる方もいます。
利用者さんの安心安全と活動の場を担保しながらも、周りの人も学べる場にするために必要なことを考える時、そもそもプロモーションは『100%オープンにしていることが前提』だと考えていたんです。
ものづくりをしているお客さんにも興味を持ってもらいたいけど、リノベーションしているプロの人とか行政で空き家活用、地方創生をしている人にもプロジェクトを知ってもらいたい。
そのために、
リノベーションに興味がない人向けの柔らかい伝え方から、行政寄りの固い伝え方、両方のプロモーションも同時並行でやっていく。オープンに向けてがんばろうではなくて、3年後に大正区のショールームにするために、逆算し、やるべきことを考え、プロジェクトがスタートしました。
秩序やルールは、利用者から自然に生まれるもの
ヨリドコ大正メイキンは常駐で管理する人がいるわけじゃありません。
管理者を雇って運営するのが、僕ら的には一番簡単ではあります。だからどの会社も管理者を雇って運営して、その人の人件費が利用料に加算されてるんですよね。
利用料を上げずに、秩序を保つためにはどうしていくか。その方法はヨリドコワーキンと同じで、
『だれかがここを守る』『活気付ける』という気持ちとか、秩序とか、ルールとかは、利用者の人から自然に生まれるものだと思っています。
僕らがやることは『それが自然に生まれやすくするにはどうするか』を考えることだと思っています。
僕らの目的はここに1日でも長くいてもらうことじゃなくて、
- 次のステップを広げていく場所
- 世界を狙えるアーティストが巣立っていく場所
を創ることであって、ここに利用者を縛りつけてはいけないと思っています。自分で力をつけていく場所にして欲しいんです。
だからこそ求められることはなんでもサポートします。
僕らと利用者さんはお互いにフラットな関係
ここは自分で全部やって当たり前なんです。「自分は利用者だ!お金を払っている!」という人が入ると一気に空気が崩れちゃう。
そうじゃなくて、
この場所を運営する僕らと、利用者さんはお互いにフラットな関係。
目線が合わないと空気が悪くなってしまいます。ここの空気感をいいと思ってくれる人は、同じような空気感を持っているんです。そもそも、得してやろうって思っている人は、ある程度お金とサービスを損得で勘定して入るかどうか決めるからここに魅力を感じないんですよね。
だから、ある程度みんなコミュニケーション能力が高い。ここだったら最初から『誰とでも話さず干渉を受けず過ごせる場』なんて思わないじゃないですか。
自ずと人が好き、関心がある、誰かを手助けしたいって人が集まりますね。
世界で活躍するにはどうするのか
僕は利用者さんの活躍する範囲を広げてたいと思っています。だから「大正のこの場所で何をするか」じゃなくて、「世界で活躍するにはどうするか」って話をします。
できるだけ、固定概念とか思い込みを取っ払ってあげるんです。
固定概念や思い込みがあるので、制約の中でしか考えられず、一人で考えても、どこを目指すべすか、目標設定できないと思うんです。
だから、それを壊してくれる人が必要。制約の中で発想するのではなく『100%自由に発想したときにどうあるべきか』ってのを伝えてあげないといけません。
この場所の中でこじんまりするのは、みんな才能があるのにもったいない。どんどん挑戦してもらいたいです。
今やるべきことはこれだけ
将来のことを考えると、モヤッとしてるし、たくさんやることがありすぎて不安になるけど、「今やるべきことはこれだけのことだよ」って伝えます。
意識を持って毎日やっていったら、考えていた将来がくるんです。今と未来をきちんと整合性をとってあげて、妥当性を伝えてあげることが大事だと思います。
クリエイターさんの新陳代謝
この間までここで革製品を作っていた利用者の方が、広い店舗に移って、ちょうど今、百貨店で展示会をしてます。その人は50歳くらいで脱サラして、「革職人一本でするんやー!」って頑張ってらっしゃいます。
新しい場に移ったとしても、大正メイキンでのイベントには、外部のクリエイターとしてどんどん参加してもらいたいです。巣立っても、中と外の境界性は曖昧なることによって、ここのことをよく知っていて、外から協力できる人が増えるってことはとてもいいことですね。
どんどん新陳代謝して、外に出ていってもらってもいいし、帰ってきたいなら帰ってきてもらっていいし、関係持ちたい人と持っていればいい。
長くすればするほど成熟して、深みが出るし、この場所以外のところも含めて、大正メイキンを感じられるようになると思います。
クリエイターじゃなくてもいい
別にここに入る人は物作りをしてなくてもいいんです。二階にはヨガのインストラクターとか英語の先生もいます。バラエティーに富んでます。
人が、何かやっている環境にいるのが心地いいと思う人ならそれでいいんですよ。