YORIDOKO TAISHO MAKIN'小川文化を残すことに決めた理由と得たもの
2020.9.5
こんにちは、小川です。
大阪の大正区にある「アトリエ+住居+店舗一体」のモノづくりびとに向けた拠点「ヨリドコ大正メイキン」が完成し、得たものについてお話しますね。
聞き手/文
ヒトト製作所 野坂大
連載アトリエ+住居+店舗一体 ヨリドコ大正メイキン
登場人物
小川
小川合名会社社長。ヨリドコ大正メイキンのオーナー。
細川
当時は小川ビルに入居していたフリーランスのデザイナー。企画全般、広報などを担当。
神吉奈桜
ヨリドコ大正メイキンができるきっかけとなった人物。イラストレーター兼、広報担当。
川幡さん
一般社団法人大正・港エリア空き家活用協議会(WeCompass)。建物の基本的な設計・施工などハード面担当。
小川文化を残すと決めた理由
この小川文化はずっと僕の会社が放置していた物件でした。先代も来たことがないと思います。先代の先代が作るだけ作って、近所の不動産屋に管理してもらっていたんです。
その不動産屋さんが、住人のおじいちゃんおばあちゃんの生存確認をしてくれたり、銀行振り込みもできないから、集金してくれたり。いつのまにか増築していたのも気づかなかったくらい、本当に任せきりでした。
僕としては「放置していてすいません!」って感じだったんだけど、住人の方からは、逆に「長い間、住まわせてくれてありがとう」て言われたんです!
そう言われてから、住んでくれていたおじいちゃん、おばあちゃんに対してどう言う形で返していけるのかなって考えましたね。
建物自体もすごい古くて汚かったけど、僕からしたらかっこいいと思ったんです。
僕らから見ると、初見は古くてボロい文化住宅。だけど、おじいちゃんおばあちゃんからしたら、当時の時代の最先端のときに入居している。だから、記憶の半分はここが新しくて活気付いていたイメージなんです。今たまたま古くなっただけ。
建物の古さは時間の年数の記憶で、僕らの知らないことが刻み込まれていて、エネルギーを感じられます。だからなるべくその名残を残したいと思ったんです。
ただ残すだけじゃだめ、運営していくにはビジネス的に考える必要がある
でもリノベーションするだけじゃだめで、運営していくにはビジネス的に考えないといけません。古い建物を残せるかどうかは建築のプロの手を借りたらいいけど、継続して運営していくことは大きな課題でした。
補助金や助成金は、税金という見えない負担を住民にかけてしまいます。それは嫌だったので、自分たちのお金でやって、運営して、収益を上げて、その利益で次のことをする。
こんなビジョンを持ってプロジェクトに取り組みました。
伝わらなかった悔しさ
ヨリドコ大正メイキンの改装費用の3000万を工面するために、銀行で融資で受けようとしたときに、銀行の担当者にプロジェクトの説明を熱弁したんです。
ですが、全く伝わらず、理解してくれませんでした。
銀行側も、理解できないことにお金を貸したくない。
- 何でそんなに古い建物を手直しするのか?
- 新築にしたらいいじゃないですか?
と言われ、全然話が伝わりませんでしたね。
担保もあるし、うちの会社は歴史もあるしってことで、お金を借りることはできたのですが、ものすごく悔しい思いをしたことを覚えています。
大家さんとしての毎週のお仕事
週に一回、掃除をしに来ています。以前はゴミ捨ても僕の仕事でしたけど、いつの間にか利用者さんがやってくれるようになりました。
掃除して、利用者さんとお話をして、お菓子食べて。
商店街でパンとか唐揚げ買ってきて、みんな食べると思ったら食べなくて、1人でいっぱい食べて寮母が太る。余ったら「お母さんに持って帰りー」って笑
僕は世間話を聞く担当です。細川は仕事の悩みを聞く担当。僕だけの日は「じゃあ、お茶しましょー」ってなりますね笑
名前に『大正』入れた理由
名前の意味は、
「大正区でメイキングする拠り所 = ヨリドコ大正メイキン」
僕らのネーミングのルールとして本当だったら、シェアオフィス『ヨリドコワーキン』にならって、『ヨリドコメイキン』の予定だったんですけど、『ヨリドコ大正メイキン』にしたのは大正を外に広めていくために、大正にプラスに働くようにしたかったからこのネーミングにしました。
このプロジェクトで得たもの
2017年の11月にヨリドコ大正メイキンが完成して、
古いものを新しくするだけではなくて、元々土地が持っている思いとか力には、新しくなったその建物にも響く影響が絶対にある。
ってことを実感しました。
人が住んでいた物件だし、リノベーションしてもやっぱり古いものが残っているってことが大事。
イベントに近所の人が来てくれて、こんなことを言ってくれたことがありました。
一番嬉しいのが「よかった!潰されへんかってんね」って言葉。
昔の面影が残っているのは嬉しい。出来上がってみたら綺麗になりすぎて潰したんかなと思ったけど、懐かしい建物が残っててよかった!
なんて言葉を聞くと「やってよかった!」と思います。