INTERVIEW:S H U建築の中山さん福祉×アート×小商いが交わる空間づくり。築70年双子長屋の全面耐震リノベーション。
ヨリドコ大正るつぼん ヨリドコ大正メイキン 僕らが考える福祉 空き家活用
2023.2.13
大正区泉尾のヨリドコ大正メイキンのとなりに古い長屋があります。長らく、空き家のままでしたが、このたび再生をして、大正るつぼんとして生まれ変わることになりました。
第三回目のお話は、設計・施工を手掛けられたS H U建築の中山代表のお話です。2017年に竣工したヨリドコ大正メイキンの施工も手掛けられました。
聞き手/文
WeCompass 川幡祐子
連載新しい福祉施設 ヨリドコ大正るつぼん
- 第1回
古い長屋を再生して多様な⼈々が⾏き交う心の拠り所に。新しい福祉施設「ヨリドコ大正るつぼん」
- 第2回
オルガワークスだからできる福祉。漠然とした不安を深刻になる前にサポートする拠り所
- 第3回
福祉×アート×小商いが交わる空間づくり。築70年双子長屋の全面耐震リノベーション。
- 第4回
ヨリドコ大正るつぼんに出店!真のインクルージョンが込められたヴィーガン+グルテンフリースイーツ
- 第5回
デザイン性や生業を極めて、誰もが訪れたくなる「垣根をなくした人と人が出会える場所」へ
- 第6回
DIYから生まれる『地域の⼈が集う⾵景が⽇常化する開かれた空間』
- 第7回
地域の人が助け合い、寄り添える場所に。人と人を「つなげるサポート」
- 第8回
好きを仕事に。『自信を持ってお勧めする美味しい野菜で地域とつながる』おばんざいカフェ
- 第9回
今までSOSを発信できなかった人が発信できる場所。アウトリーチの最前線になることを期待。
テナントにも柔軟性を持たせた「大正るつぼん」
前回、前々回と「大正るつぼん」のコンセプトやこのプロジェクトにかける思いをオーナーからお聞きました。
設計士の中山さんは「大正るつぼんを」設計する際オーナー(オルガワークス)からどのようなオーダーがありましたか?
1階には、1テナントあたり3〜4坪の大きさの店舗を入れたい!ということ、そして、そのテナントとテナントの間の壁は移動させたり取り外し可能なフレキシビリティを持たせたい!とオーダーがありました。
1テナントあたりが3〜4坪というのはなぜですか?
それには理由があって、 3〜4坪というのは、一人でオペレーションするのにちょうどいい大きさだと考えているからなんです。 初めてお店を構える場合、初期費用や毎月の固定費(家賃や人件費など)は低く抑えたいと考えますよね。 それを踏まえると、一人でオペレーションする最適な大きさが3〜4坪になるんです。
なるほど!
ちょうどいい大きさで、使い勝手も良いということですか?
はい、 1人の店主がカウンターの中に立ちお客さんが最高でも8人程度、自分の周りのすぐ手の届く範囲に調理器具や材料を置ける広さを想定しています。 過去のるつぼん以外のお仕事でも、そのような設計と施工をたくさんしたことがあるんですが、小さく始めて成功したら、少し大きいお店を展開する店主さんも割といらっしゃいますよ。
クライアントの意向を踏まえ工夫を凝らした設計
今回、築70年の長屋「小川文化」の南棟を全面耐震リノベーションしましたよね。
リノベーションは、壊してみないとどこまで使えて使えないかがわからないという点があるんですよ。 古いものを補修してそのまま使うのか新しくするのか、バランスを考えながら、設計と施工の作業を行ったり来たりして決めていきます。 僕の経験上、お店として作る場合、水廻りやお客さんの肌に当たるような部分は綺麗なものを好む人が多いので、今回は新しいものに取り替えています。
なるほど。壊してみないとわからないんですね、
どのような流れで設計を進めていくのでしょうか?
僕は設計する前に、クライアントから大体のイメージを聞き、その考えを自分なりに整理して提案するようにしているんです。 ほとんどのクライアントはデザインや空気感などのイメージを持たれてるので、僕はクライアントの頭の中にあるモヤッとあるイメージを言語化し、僕や会社のこだわりなども合わせながら整理して提案するようにしているんです。
クライアントさんの頭の中にあるモヤッとしたイメージを具現化していくような作業になるんですね。
設計士としてのこだわりを優先的にクライアントに提案する、というやり方もあると思いますが、僕の場合はクライアントの意向を踏まえた上で、その中で色々工夫するやり方の方がやりやすいんですよ。
クライアントさん側のイメージや意向を大事にするという考え方なんですね!
特にミニマムな店舗になると、少しの空間も無駄にはできないので、どういった料理をどのような手順で作るのか、ストックの必要量はどのぐらい?など、細かく聞いて厨房周りを作るようにしているんです。 嬉しいことに、実際に店に立つ方々に使いやすいとお褒めの言葉をよくいただくんですよ。
言葉を交わしやすい空間づくり
奥のスペースとテナントスペースの間には中庭へ続く通路や、階段とトイレがありますよね。
はい、この辺は全てオーナーさんの意向なんです。 奥のスペースは、体に良い素材を使ったスイーツを障がい者の方が作り販売するスペースになってるんです。 落ち着いて作業を行えるよう、通路で他のテナントと区切り、独立した空間を設計しました。
そうなんですね。
そして中庭が重要な役割があり、日常的に建物内の従業員の方やご近所さんが休憩をしたり言葉を交わしたり出来る空間になれば良いと考えています。 トイレは中庭と建物内からアクセスが出来るようにしました。 週末などにはマルシェを開いて、さらに賑やかになるので、そこに集まった人達が使いやすいように、中庭からもトイレを使えるようにしたんです。
2階については、オーナーのご意向はどうでしたか?
介護・理容・医療などの事業者さんのオフィスを想定したテナントが並んでいます。 特徴は、オフィス自体はそれぞれ独立していますが、共用のダイニングキッチンスペースがあることです。
この共有スペースを作る理由は、お悩み相談の内容によっては、各事業者さんの専門性を持ちよった方が解決の近道だったり、さらにはお互いの仕事上においてもプラスになるって考えたからです。 その情報交換の場所として、神社が見える一番景色の良い東側のスペースに共同のダイニングキッチンを設けたんですが、全てオーナーさんの意向なんですよ。
神社が見える場所にこだわりの共同スペースですか、いいですね。
外観デザインはどうでしょうか。
1階については、少しレトロな雰囲気のかわいいお店が立ち並んでいて、緑や看板、店舗それぞれの個性が外にも溢れ出ているような感じになります。 それに対して2階はオフィスなので目立たない外観にしようと考ました。 そうすることで建物全体がまとまり、1階の雰囲気も引き立つのでは?と考えて、外観の全体バランスは僕の会社で提案しました。 今後は、北棟のヨリドコ大正メイキンと全くテイストの違うデザインが並び、個性的な外観全体の空気感を崩してしまわないように、借主の意向も十分に聞きながら色々と提案できればと考えています。
SHU建築
ヨリドコ大正るつぼん設計・施工を手掛けられたS H U建築の中山代表のお話です。大阪、神戸、京都を中心に住宅、店舗、オフィスのリノベーション、新築工事をされています。2017年に竣工したヨリドコ大正メイキンの施工も手掛けられました。
連載新しい福祉施設 ヨリドコ大正るつぼん
続きを読む
- 第1回
古い長屋を再生して多様な⼈々が⾏き交う心の拠り所に。新しい福祉施設「ヨリドコ大正るつぼん」
- 第2回
オルガワークスだからできる福祉。漠然とした不安を深刻になる前にサポートする拠り所
- 第3回
福祉×アート×小商いが交わる空間づくり。築70年双子長屋の全面耐震リノベーション。
- 第4回
ヨリドコ大正るつぼんに出店!真のインクルージョンが込められたヴィーガン+グルテンフリースイーツ
- 第5回
デザイン性や生業を極めて、誰もが訪れたくなる「垣根をなくした人と人が出会える場所」へ
- 第6回
DIYから生まれる『地域の⼈が集う⾵景が⽇常化する開かれた空間』
- 第7回
地域の人が助け合い、寄り添える場所に。人と人を「つなげるサポート」
- 第8回
好きを仕事に。『自信を持ってお勧めする美味しい野菜で地域とつながる』おばんざいカフェ
- 第9回
今までSOSを発信できなかった人が発信できる場所。アウトリーチの最前線になることを期待。